PAS(高圧気中開閉器)とは?役割・更新目安15年の理由・劣化リスクをわかりやすく解説

📋 この記事は「高圧受電設備 機器別更新ガイド」シリーズの第1回です。
キュービクルを構成する主要機器を1台ずつ取り上げ、役割・更新目安・リスクを解説していきます。

「PASという機器が更新時期を過ぎていると言われたが、何をする機器なのかわからない」
「なぜ15年で更新しなければならないのか、理由を知りたい」

点検報告書や業者からPASの更新を勧められても、
そもそもどんな機器なのかわからないと判断に困ってしまいます。

この記事では、PAS(高圧気中開閉器)の役割・設置場所・
更新目安が15年とされる理由・劣化した場合に起こりうるリスク
を、
専門知識がない方にもわかりやすく解説します。

PAS(高圧気中開閉器)とは

PASとは Pod-type Air Switch(ポッド形気中開閉器)の略称で、
電力会社の配電線と施設内の高圧受電設備との「接続点」に設置される開閉器です。
一般的に電柱の上や建物の外壁付近に取り付けられており、
「電気の入口にある門」として機能します。

正式名称 高圧気中開閉器(Pod-type Air Switch)
設置場所 電柱上・建物外壁・受電点付近(屋外設置が基本)
対応電圧 高圧(6,600V)
更新目安 15年(設置環境・使用状況により前後する)
関連法令 電気事業法(自家用電気工作物の保安規程)

PASの3つの役割

PASは小さな機器ですが、施設の電気設備にとって非常に重要な役割を担っています。

役割①
電気の「入口の門」として
開閉・遮断を行う


電力会社の配電線から施設への電気の供給を入切する機能を持ちます。
工事・点検・緊急時に電気を安全に遮断するための「スイッチ」として機能します。
役割②
施設内の事故が
電力会社側に波及するのを防ぐ


施設内で短絡(ショート)や地絡(漏電)などの事故が発生した際に、
PASが自動的に開放(遮断)することで、電力会社の配電線への影響を食い止めます。
近隣への停電被害を最小限に抑える「防波堤」の役割です。
役割③
電力会社との
責任分界点を明確にする


PASは電力会社の設備と自家用設備の「責任の境界」に位置します。
PASより電力会社側の設備は電力会社が管理し、
PASより施設内側の設備は施設側が管理する義務を負います。

PASには SOG(Storage Over-current and Ground fault relay)機能 が
内蔵されているタイプが一般的です。
地絡事故(漏電)を検知して自動的に遮断する保護機能で、
近隣の停電被害を防ぐために重要な役割を果たします。
この機能が劣化・失われると、事故時の被害が広がるリスクがあります。

更新目安が「15年」とされる理由

キュービクル内部の機器の多くが更新目安20年とされるなかで、
PASはなぜ15年と短く設定されているのでしょうか。
主な理由は、屋外に設置されることによる劣化の速さにあります。

設置直後〜数年
性能は安定している。屋外での紫外線・雨風・温度変化にさらされながら稼働を続ける。
北海道・十勝地域では冬季の低温・着雪・凍結サイクルが絶縁材や可動部に負担をかける。

7〜10年ごろ
外装の劣化・シール材の硬化・可動部のグリス劣化が進み始める。
内部への湿気・水分の侵入リスクが高まる。
年次点検での目視・動作確認が特に重要になる時期。

15年前後
絶縁材・シール材・可動部品の劣化が本格化する目安の時期。
SOG制御装置のバッテリー劣化・電子部品の経年劣化も進む。
外観上は問題なく見えても、内部の保護機能が低下しているリスクがある。
この時期を目安に更新の検討を始めることが推奨されている。

15年超〜
SOG機能の誤動作・不動作リスクが高まる。
接触部の腐食・絶縁低下による地絡・短絡事故のリスクが増大する。
事故発生時に近隣への波及停電につながる可能性が生じる。

北海道・十勝地域では、本州に比べて冬季の低温・積雪・凍結サイクルが激しく、
屋外設置のPASへの負担がさらに大きくなる傾向があります。
設置環境によっては15年を待たずに劣化が進む場合もあるため、
点検結果を踏まえた判断が特に重要です。

PASが劣化・故障した場合のリスク

PASの劣化を放置した場合、どのような問題が起こりうるかを整理します。

  • 波及
    近隣への波及停電が発生するリスク

    SOG機能が正常に動作しないと、施設内の事故が電力会社の配電線に影響を与え、
    同じ配電線につながる近隣施設・住宅を巻き込む大規模停電(波及事故)につながります。
    波及事故は施設側の損害賠償責任が問われる場合があります。
  • 停電
    突発的な自施設の停電

    PASの接触部腐食・絶縁低下が進むと、
    予告なく施設全体が停電するリスクがあります。
    工場・病院・食品関連施設など、停電が業務に直結する施設では特に深刻な問題になります。
  • 誤動
    SOG機能の誤動作・不動作

    SOG制御装置の電子部品・バッテリーが劣化すると、
    事故がないのに誤って遮断する(誤動作)か、
    逆に事故時に動作しない(不動作)かのリスクが生じます。
    どちらも施設運用に深刻な支障をきたします。
  • 開閉
    点検・工事時に正常に開閉できなくなる

    可動部の腐食・固着が進むと、点検や工事のために電気を遮断しようとしても
    PASが正常に動作しなくなる場合があります。
    これにより、工事・点検自体が安全に行えなくなるリスクがあります。
  • 賠償
    波及事故による損害賠償リスク

    PASの不具合が原因で波及停電が発生した場合、
    電力会社・近隣への損害賠償責任が生じることがあります。
    適切な時期に更新・保守を行うことが、リスク管理の観点からも重要です。

PAS更新のタイミングと進め方

PASの更新は、電力会社(北海道電力ネットワーク)への工事申請・立会いが必要な工事です。
申請から工事完了まで一定のリードタイムがかかるため、
15年が近づいてきた段階で早めに現地確認を依頼することをおすすめします。

PAS更新を検討し始めるサイン

  • 設置から15年以上が経過している
  • 点検でSOG機能の動作確認・バッテリー確認が長期間行われていない
  • 外観に錆・腐食・変色・シールの剥がれが見られる
  • 電気主任技術者から更新・要注意の指摘を受けている
  • 近隣で雷・強風などの影響により電気設備のトラブルが続いている
PASの工事には電力会社との事前調整が必要です
PASの交換工事は電力会社の配電線と直結する設備のため、
工事前に北海道電力ネットワークへの工事申請・立会い依頼が必要です。
電力会社の都合や繁忙期によってスケジュール調整に時間がかかる場合があるため、
更新を検討している場合は早めにご相談ください。

シリーズ紹介

高圧受電設備 機器別更新ガイド

本シリーズでは、高圧受電設備を構成する主要機器を1台ずつ取り上げ、
役割・更新目安・劣化リスクをわかりやすく解説していきます。

  • 第1回:PAS(高圧気中開閉器)← 本記事
  • 第2回:キュービクル QB(高圧受電盤)
  • 第3回:高圧ケーブル CVT・CV
  • 第4回:真空遮断器 VCB
  • 第5回:変圧器 Tr
  • 第6回:高圧交流負荷開閉器 LBS
  • 第7回:断路器 DS・計器用変成器 CT・VT ほか
※公開順・内容は変更となる場合があります。

この記事のまとめ

  • PASは電力会社の配電線と施設の高圧受電設備をつなぐ「入口の門」。電気の開閉・事故遮断・責任分界の3役を担う。
  • 屋外設置のため紫外線・雨風・低温サイクルの影響を受けやすく、キュービクル内部機器より短い15年が更新目安とされている。
  • 北海道・十勝地域の冬季環境は、PASの劣化をさらに加速させる要因になりうる。
  • 劣化・故障時のリスクは、近隣への波及停電・突発停電・SOGの誤動作・損害賠償と多岐にわたる。
  • 更新には電力会社への工事申請・立会いが必要なため、15年が近づいたら早めの相談が重要。

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